無花果(いちじく)のソテー、サラダ、白味噌和え
2009年8月27日(木)
結局、朝方まで
仕事の連絡やら雑務やらをこなして
数時間の睡眠で、家を出る。
広島へ向かう。
新幹線に乗り、座席につくと
早速、弁当を頂く。
冷蔵庫には夏野菜が溢れていたので
少しでも使っておこうと
昨日の夜のうちに作っておいた。
蓮根とピーマンのきんぴら
ゴーヤの辛口ナムル
かぼちゃの黒ごま和え
ゆで卵
枝豆
プチトマト
自家製ゆかりの玄米おにぎり
それから
近所の鶏肉屋さんで買っておいた
鶏肉の立田揚げ
お弁当は、我ながらとても美味しい。
ゴーヤのナムルが少し辛すぎたけれど
おにぎりと頂くと丁度良い。
どんどん通り過ぎる景色を見ながら
新幹線ってこんなに早かったっけ?と
また思う。
おばあちゃんが住む広島に向かうため
小さな頃から毎年かかさず利用している新幹線。
仕事をするようになってからは
年に何度も乗るようになった。
けれど私の中で新幹線といったら
小学四年生の夏休み、
妹を連れて、初めて二人だけで帰省した
あのどきどきしたシーンが一番によみがえるから
今の新幹線とはかなり違うのだ。
一番違うのは音だ。
昔の新幹線はガタンゴトン、ガタンゴトンと
電車らしい響きがあった。
今は、そんな古めかしさはすっかりなくなって
断続的にきーんと張りつめた音がする。
その張りつめた感じが苦手だ。
早すぎると感じてしまう。
人間が処理できるスピードを遥かに越えた早さ。
どうもなじめない。
けれどそのなじめない速度のおかげで
広島は随分と近くなった。
時間は半分ぐらい短縮されたのではないか。
3時間ほどで新尾道につく。
新尾道からは、バスを乗り継いで1時間。
今日はありがたいことに旦那さんが一緒。
駅近くでレンタカーを借りて北上。
世羅に向かう。
世羅は、山間にあるなにもない町。
しいて言えば、松茸と梨の産地。
なにもないけれど、私にとってはすべてがある場所。
世羅に着く。
市場が見えてくる。役場を通り過ぎる。
いつもの静かな町並みが目に入る。
父方の家に到着。
おじいちゃんは他界して、
おばあちゃんは東京の病院にいる。
よって、今は主はいない。
全ての部屋の窓を開け、風を通す。
それだけで、家がよみがえる。
家がまた動きだしたように感じる。
隣と向かいの家に挨拶に行く。
空き家ながら、いつも気にかけてくれているのだ。
何かのときのために、鍵も預かってくれている。
田舎ならではの良き関係。
庭に出て、遠くの畑に目をやる。
丁度、無花果の時期のはずだけれど
まだあまり実ってないようにも見える。
ゆっくり確認したい気持ちをおさえて
施設へ向かう。
世羅には母方の家もある。
こちらのおじいちゃんも既に他界。
おばあちゃんは、今年の春まで
一人暮らしをしていたのだけれど
とうとう老人ホームに入ってしまった。
一人で生活できなかったわけではない。
ただ一人で暮らすのが淋しくなっことと
子供達は誰も近くに住んでいないので
何かあったときにかけつけられる人がいないこと
などから、最初は嫌がっていたものの
周囲に説得され、とうとう入ったのだそうだ。
おばあちゃんは
思っていたよりずっと元気だった。
頭もしっかり回っている。
何より記憶力がいい。
広島の田舎のきつい方言で
おばあちゃんは堰を切ったように話まくる。
私の旦那さんは全部は理解できないらしい。
へじゃけのお(だから)、ありゃあのお(あれは)、
そげな(そんな)、いけんのん(いけない)、みやすい(易しい)、
いたしい(難しい)、こまい(小さい)、いぬる(帰る)などなど。
おばあちゃんのきつい広島弁を聞くと
心がゆるゆるとほぐれていく。
おばあちゃんが元気で良かったと思う。
元気な頃のおじいちゃんを思い出す。
田んぼや畑、川や山で遊び疲れた小さな自分を思い出す。
たくさんの気持ちがないまぜになりながら
最後のところで、またここへ来られて良かったと思う。
病院のような時間の流れで進む施設では
夕方には早々と夕飯の時間になる。
食堂におばあちゃんを送り
また明日来るからと伝えて、後にする。
夕飯は、近くのお好み焼き屋さんで頂く。
おばちゃんが切り盛りしている小さな店。
大量に刻まれたキャベツと豚肉を炒めている。
それをクレープのように薄く焼いた生地でサンドする。
卵、揚げ玉、トッピングしたイカ、餅、チーズが加えられ
じっくりと焼かれていく。
へらでぐっと押しつぶされると
蒸されたキャベツの甘い香りが
固まりとなって流れて来た。
甘い香りが汗と一緒に体にまとわりつく。
世羅で初めての外食を頂く。
考えてみれば、ここ世羅では
外食しようという発想がなかった。
おばあちゃんの料理以外は
食べたことがなかった。
お好み焼きは、奇をてらわず
まっすぐで真面目な味だった。
美味しくて良かった。
2009年8月28日(金)
朝ご飯は、昨日立ち寄った小さな市場で買った
人参、ラディッシュ、梨、葡萄。
どれもみずみずしくて、しっかりと甘い。
塩もつけずに、ぽりぽりと頂く。
施設のおばあちゃんに顔を出した後、
母方の家に行く。
おばあちゃんはこの春
野菜を植え付けた後に、施設に入ることになった。
昨日もしきりに畑を気にしていた。
小さな畑には、案の定雑草が伸び放題で
その隙間を縫って、胡瓜や南瓜(かぼちゃ)が
なんとか生き延びていた。
胡瓜は収穫されずに放っておかれて
肥大してぱんぱんになっている。
畑の端に、大きな南瓜がごろんと転がっていた。
誰にも構ってもらえずに、でも
しっかりと育っていて美味しそうだ。
ありがたく収穫する。
韮(にら)はきれいな白い花をつけていた。
鶏頭(けいとう)やオレンジ色のコスモスの濃い色が
緑の中に映えて、とてもきれい。
畑は荒れ放題でも、景色はいつもと変わらない。
墓参り。おじいちゃんに挨拶。
カラフルな灯籠が風に揺れている。
広島だけの風習らしい。
色見のない墓が、明るく映える。
とても好きな光景。
父方の家へ戻る。
無花果の収穫。
父方のおじいちゃんは
たくさんの果物の木を植えていた。
どの木も見事に大きくなって
主がいない今も、毎年たくさんの実をつける。
残念ながら無花果は、2割程度しか熟していなかった。
少し来るのが早かったかな。
赤くなっていなくても、ふくらんでいるものは収穫していく。
青く、まだ甘みが出ていなくても
天ぷらにして頂くととても美味しいとは
東京のおばちゃんの口癖だ。
棗(なつめ)も鈴なりだ。
あと少し色づいたら生で食べられる。
林檎に似た爽やかな味がして
干した棗よりずっと美味しい。
農作業用の帽子をかぶり
笑顔で収穫する私を
旦那さんが喜んで激写している。
世羅の景色に馴染みすぎて
面白いらしい。
東京のおばちゃんに
収穫した無花果を送る。
青い実を多めに入れる。
きっと天ぷらにして食べるだろう。
天ぷらもいいけれど
やっぱり生で食べるのが一番美味しい。
次はソテー。
砂糖を加えなくても、いちじくの甘みで
うっすらとキャラメリゼされる。
中のふにゃふにゃと、外のかりかりのバランスが
どうにもやめられない。
その次は、白味噌和え。
白味噌やねり胡麻との相性はなかなかだと思う。
これは若いほうが美味しい。
控えめな甘さは
鶏肉や魚のソテーのソースにもいい。
レモンの酸味も良く合う。
レモンと塩、オリーブオイルを垂らして
ルッコラなどと合わせて頂くのもいいかもしれないな。
定番のジャムやケーキも捨てがたい。
あれこれ頭の中ではレシピが渦巻く。
それを全部叶えられる以上に
無花果はたわわになっている。
夕方、またおばあちゃんに顔を出す。
畑の報告をする。
納屋からじゃがいもや玉葱を
もらってきたことも伝える。
おばあちゃんは、せっかく遠いところから私達が来たのに
飯も出せんでつまらん、と悲しい顔をする。
おばあちゃんが元気で
野菜や果物も収穫できて
それだけで十分楽しいから大丈夫。
大丈夫なんだけど、いろいろ言葉を並べたところで
取り繕っているようになってしまう。
うまく別れ際を作れないまま
また明日と言って、施設を後にした。
夕飯は、庭に七輪を出して焼き肉。
ビール片手にのんびりと焼いて頂く。
少しずつ陽が落ちていく。
暗くなるにつれ、辺りの音も消えていく。
世羅の夜には音がない。
虫の鳴き声は空気に溶け込んでしまっている。
それ以外の誰かが発する余計な音がない。
静まり返る中で、
じりじりと肉の焼ける音を聴いている。
二人の会話もいつもよりゆっくりと流れる。(2009年9月8日更新)
無花果のソテー、サラダ、白味噌和え
【無花果のソテー】
材料:無花果 1個、 塩ひとつまみ、 オリーブオイル 大さじ1
1)鍋にオリーブオイルをひき、半分に割った無花果を皮ごと弱火で、じっくり焼く。
2)途中ひっくり返し、全体の面を焼き、最後に塩で味をととのえて、あつあつを頂く。
*バターで焼くのも、コクが出て美味しいです。バターは焦げやすいので注意してください。
*好みで最後に砂糖を加えて、軽く焦げ目をつけても美味しいです。
*そのままでも、アイスクリームやバター、生クリームなどを添えても。
【無花果のサラダ】
材料:無花果 2〜3個、 ルッコラ 1束、 オリーブオイル 小さじ1、 レモン汁 小さじ1、
砕いた胡桃(くるみ) 小さじ1、 塩、胡椒 適量
1)無花果は軸の方からそっと皮をむき、食べやすい大きさに切る。
2)ボウルに、さっと洗って水気を切ったルッコラ、無花果、フライパンでから煎りした胡桃を入れ、
塩、胡椒を振りいれて、さっと混ぜ合わせる。
3)皿に盛りつけて、レモン汁、オリーブオイルを振って頂く。
【無花果の白味噌和え】
材料:無花果 2〜3個、 白味噌 大さじ1、 みりん 大さじ1
1)無花果は軸の方からそっと皮をむいて、食べやすい大きさに切る。
2)小鍋に白味噌、みりんを入れ、弱火にかけて混ぜる。
溶け合って、とろりとなったら火から下ろす。
3)あら熱をとった味噌と無花果を和えて、頂く。
*好みで、醤油をひとたらししても美味しいです。
*白ねり胡麻、ラー油などを控えめに合わせるのもおすすめです。




































































アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。
