第42回 豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

私の、この食いしん坊の気質は
まぎれもなく血筋によるもの
と思っています。

広島のおじいちゃんが残してくれた
庭を見ればわかります。

季節の野菜を作る畑の周囲には、
果物の木がずらりと並びます。

果物も季節ごとに楽しめるようにと
収穫時期を考えながら、
ひとつずつ増やしていったそうです。

5月には、田植え苺(木苺)
6月頃には、梅、さくらんぼ、枇杷(びわ)
8月終わり頃から、無花果(いちじく)
9月には、葡萄
10月には、栗、棗(なつめ)
11月には、柿
そして12月には金柑。

我がおじいちゃんながら、
なんて食いしん坊なんでしょう!

いくつかの木はもう枯れてしまったけれど
今でも、たわわに実を付けるものもあります。

その美味しい実につられて、
おじいちゃんが亡くなった今も
年に何度か帰省します。

一方で、果物がなかったなら、
決して近くはない広島に頻繁に行くだろうか
とも考えることもあります。

そう思うと、おじいちゃんは
随分と魅力的なお土産を
残してくれたなと思います。

実は、この畑には、
まだしかけがあります。

畑の一部がこんもりと
丘のように盛り上がっている部分があって、
これは一体なんなのだろう?
とずっと不思議に思っていました。

実は、この小さな丘の中に、
たくさんの自然薯(じねんじょ)が
隠れているのだそうです。

しかも後々、掘り出しやすいようにと
こんもりと土を盛り、その中に
自然薯を入れたのだそうです。

もったいなくて、まだ掘り出していませんが
きっと10年もの、20年ものの自然薯が
眠っているはずです。

おじいちゃんの食いしん坊ぶりには
脱帽です。
 

さて、実りの秋になりました。
そういうわけで、私は
いつものように果物につられて
広島へ行ってきました。

夏に帰省したときには
まだ青かった棗が、
すっかり深く色づいていました。
(第35回、36回にそのときの様子が載っています。
ぜひ合わせてご覧下さいね。)

鈴なりの棗です。
随分と高い木になってしまって、
上のほうは、残念ながら手が届きません。

秋の空に、赤い実がよく映えます。
穫っても穫っても追いつかないほど
たわわになった棗の実。

秋の澄んだ空気と、実りの収穫。
私の求めているものが
ここには、普通にあります。
うらやましい限りです。


 

横浜に戻り、棗を干しています。

以前にも書きましたが、棗は
生で食べると、青リンゴのような爽やかな味がします。

生で食べるのが一番好きですが、
ほとんど出回ることはないのが残念です。

でも干し棗ならば、どこでもとはいきませんが
種類豊富な食材店や、中華食材の揃ったところで
見つけることができます。

私は横浜の中華街でよく求めます。

棗は漢方に使われるくらい
とても優秀な食材です。
体を温めるなどの効果があります。

そのままドライフルーツとして頂いても良いです。
ほんのりとした優しい甘みがあります。

また酒やワインに漬けてお酒にするのも
手軽で良いですね。

料理には、薬膳料理以外には
使い勝手が悪いように思われがちですが、
どぎつさのない優しい甘みは
どんな食材とも相性が良いように思います。

お肉と一緒に煮込むと
あっさりとした果物のコクや風味が加わって、
いつもとは違った角度から楽しめると思います。

豚肉のスペアリブとともに
時間をかけて煮込みました。
圧力鍋でなら、すぐに仕上がりますよ。

棗の実の中に、お肉と醤油の味がしみ込んで
棗自体もふくよかな味になります。

マッシュポテトを添えて。
お肉や棗の風味が濃縮されたソースを
マッシュポテトに吸わせて
あますことなく頂きます。
 

ところで、数年前、
この美味しい棗を、横浜でも生で食べたいと思い、
棗の枝を一本折って、横浜に持ち帰りました。

我が家の庭に植えてみました。

棗は、冬になると葉が落ちてしまうので、
最初の1年目は、ただの棒が
土に刺さっているだけの状態でした。

やっぱり、こんな適当な植え方じゃ
無理だったかなと思っていた2年目の春。
数枚の葉っぱが出てきました。

3年目の春には、ただの棒だった枝から、
太めの枝が分かれて出てきました。
葉っぱの数もぐんと増え、
小さな白い花をいくつか付けました。

そして今年、4年目。
背丈1メートルほどの小木になり、
ようやく1つだけ実がなりました。

残念ながら、唯一の実は
強風の日に落ちてしまったのですが、
きっと来年は、たくさんの実をつけてくれるのでは
ないかと思います。

とうとう生の棗が
横浜でも食べられるかもしれません。
待った甲斐があります。

なんてことをしているあたり、
つくづく血は争えないなと思います。(2009年11月10日更新)

コラム

豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

材料:豚のスペアリブ 3本(500g程度)、 長葱 2本、 干し棗 10個〜15個、
   水 1カップ、 白ワイン(または酒) 1/2カップ、 醤油 大さじ2、
   にんにく 1かけ、 生姜 1かけ
   
1)フライパンを熱して、スペアリブの表面全体に焼き目を付ける。
  空いているスペースにぶつ切りにした長葱を並べて、焦げ目を付ける。
2)別の鍋に、水、白ワイン、醤油、すりおろしたにんにくと生姜を入れて、沸騰させたところに
  スペアリブ、長葱、棗を入れる。落とし蓋をして、弱火で1時間ほど煮込む。
3)途中アクを取り、煮詰まってきたら、ソースをスプーンですくってスペアリブに何度かかけ、
  ソースを全体にからめる。水分がなくなる直前に火から下ろして、頂く。

*圧力鍋で煮込むと、短時間で仕上がります。
*長葱を玉葱にすると、より甘みが出てこっくりとした味になります。

バックナンバー

ごあいさつ

第1回 蕪、酒粕、豆乳のスープ

第2回 黒豆、シナモン風味

第3回 鶏だしスープのトック(韓国雑煮)

第4回 干し大根のソテー、ケッパーソース

第5回 冬のジャム、生姜とはちみつ風味

第6回 おかき、三種

第7回 スパイシーチョコレートケーキ

第8回 カリフラワーのサブジ

第9回 春菊ペーストのパスタ

第10回 雪ノ下の天ぷら

第11回 長葱のクリームチーズ和え

第12回 春キャベツとささみの蒸し煮

第13回 新玉葱、ドライトマトのマリネ

第14回 サンドイッチフィリング、三種

第15回 クレソン、生姜のお稲荷さん

第16回 新じゃが、プルーンの煮込み

第17回 うちのトマトパスタとルッコラのサラダ

第18回 筍のピクルス

第19回 牛蒡(ごぼう)と胡桃のキャラメリゼ

第20回 おからたっぷりのスコーン

第21回 人参のサラダ、人参のポタージュ

第22回 生らっきょうのフリット、ローズマリー風...

第23回 味付け卵、八角風味

第24回 アイリッシュソーダブレッド

第25回 イカ、トマト、ミントの炒め

第26回 梅味噌、梅味噌豆

第27回 塩豚、茹で豚

第28回 ガーリックトースト

第29回 ローズマリーポテト

第30回 葉唐辛子、鶏肉のカレー

第31回 夏のキムチ三種

第32回 ラタトゥユ、ガスパチョ

第33回 生姜ジュース

第34回 セミドライトマト

無花果(いちじく)のソテー、サラダ、白味噌和え

第36回 南瓜(かぼちゃ)のグリル、玉葱のソース

第37回 緑のサラダ、赤のサラダ、黒のサラダ

第38回 蕎麦粉のガレット

第39回 柿、ディルのクリームチーズ和え

第40回 蛸(たこ)、青海苔のクリームソースパス...

第41回 ドライフルーツ、ナッツのケーキ

第42回 豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

第43回 焼き芋、レモンバターソース添え

第44回 野菜ルーのカレー

第45回 コジード・ア・ポルトゲーザ(ポルトガル...

第46回 鰯の塩焼きとカルド・ヴェルデ

第47回 ヨーグルトパンケーキ

最終回 牛すじの煮込み


アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。


おたよりを送る