第43回 焼き芋、レモンバターソース添え

とうとう今年も
待ちに待った季節がやってきました。

さつまいもの季節です。

どうしてこんなにさつまいもが
好きなのだろうと思うほど
毎年、びっくりするくらいの量を買い求め
見事に胃袋に収まってゆきます。

ほんのりとした甘みが優しくて、
ほっとした気持ちになるからかもしれません。
秋から冬にかけて、朝ご飯に、
おやつに、そしておかずにと
形を変えて楽しむ毎日です。
 

小さな頃から好きでしたが、
開眼したのは10年ほど前、
ライブで訪れた鹿児島です。

初めて訪れた場所では、八百屋さんやスーパーなどで
現地の食材をくまなくチェックするのが趣味なのですが
薩摩の国である鹿児島では、
さすがにさつまいもの品種が多く、目移りするほど。
楽しく選んだことを思い出します。

その中で初めて目にした「安納芋」という品種。
珍しさで買い求め、持ち帰って頂いてみると
その味のふくよかさ、甘さ、そして何よりジューシーさに
打ちのめされました。

当時はまだ安納芋を
横浜で見つけることができなかったので、
それ以来、種子島の農家から買い求めるようになりました。
毎年、30キロ程送ってもらっています。
 

 
さつまいものレシピを挙げたら
きりがありませんね。

大学芋や、天ぷら、レモン煮、きんぴら、
ご飯と炊いてもいいですし、
お肉と合わせて煮込んでもなかなかです。

どう料理しても好きですが、
私の中で一番は、焼き芋です。

あれこれ試してみましたが、
シンプルな焼き芋に勝るレシピはない
というのが私の結論です。

焼き芋は、さつまいもの一番の売りどころ、
甘さを最大限に引き出してくれる
素晴らしいレシピだと思います。

焼きたてを割ると
優しい匂いとともに立ち上る
ゆらゆらとした湯気にも和みます。
 
 
大好きな焼き芋のクオリティーを上げるため
どうやったら美味しく焼けるか
実験を繰り返したことがありました。

いろんな器具で、調理時間を調節して
試行錯誤の末、我が家のレシピが決まりました。

アルミホイルに包んで、アラジンに乗せ、
片面20分、裏返して20分。
(芋の大きさによっては時間をのばします。)

レシピもシンプルなものに落ち着きました。
少々、時間がかかるのですが
これぐらい待つと、びっくりするくらいの甘みを
引き出すことができます。

安納芋なら、
水分もしっかり残っていて
この上なくジューシー。
ぽそぽそした感じは全くありません。

そして、香ばしい皮。
皮と皮のすぐ近くの身が
固めにこうばしく焼き上がり、
ジューシーな中身とのコントラストが良いのです。
 

実験中、じっくり長く焼くと美味しい
ということに気付くまでは
手軽にレンジでチンでできないものかと
トライしたこともありました。

でもレンジでは、全く美味しくならないのです。
むしろ、美味しさは破壊されて
ダメな部分だけが残ってしまう感があります。
 
どうやっても悲しいくらいに
味もそっけもなくなってしまうので
このさつまいも実験のあと、
他の調理にも、電子レンジ自体を
使わなくなりました。
 

では何故アラジンだと美味しいのか。
答えは、さつまいもの性質にありました。

最近知ったのですが、
低温でゆっくりと加熱することによって、
澱粉質が糖質に変わっていくのだそうです。

だから高温処理する
電子レンジではダメなのですね。

やはり時間がかかっても
昔ながらの方法に近い方が
美味しさを引き出せるのだと思います。
 

焼き芋いろいろです。

紅あずま
関東で一番出回っている品種です。
スタンダードなさつまいもという感じです。
甘み、ほくほく感のバランスが良いです。

石焼き芋屋さんで買い求めると
紅あずまが多いですね。

鳴門金時
とても上品な甘み。
質感の良い肉質。
薄紫の肌がきれいです。
出立ちが美しい。

五郎島金時
石川の名産です。
こちらも控えめな甘み。
あっさり、ほくほく。

紅まさり
ねっとりとした肉質と
しつこくない甘さ。
他の焼き芋に比べて
ふにゃっとしているのがわかります。

そして、大好きな安納芋。
特に安納こがねという品種が好きです。

この芋の良さはジューシーさ。
水分も甘さも多い。
色も鮮やかな黄金色。

ねっとりとして、うまく焼けば
とろとろするほどの食感に。

さつまいもがぽそぽそして苦手
という方は特におすすめです。

そして種子島紫芋。
こちらも味の濃さが秀逸です。
焼き芋にすると、色濃く仕上がります。

 
どの家庭でもアラジンや
やかんを乗せられるストーブが
あるわけではないかもしれません。
その場合はオーブンや、魚焼きのグリルを使えば
じっくり焼くことができます。

アルミホイルに包めば、ふかし芋風に。
私の好みでは、包まずにそのまま焼くのが好きです。
皮がぱりっと焼けるので
皮も美味しく頂けます。
 

そのまま頂くだけで
充分美味しい焼き芋ですが
ときどき、目先を変えてソースを添えます。

王道では、シナモン+バター+甘み(甜菜糖、砂糖など)。
オリーブオイル+塩もシンプルに美味しいですね。

レモン煮にヒントを得た
レモンバターソースもおすすめです。
甘酸っぱさがあとをひきます。


 

焼き芋と言えば、思い出すのは
確か私がまだ6歳の頃。

父に何かで怒られた私は、
お気に入りの籠のバッグに
リカちゃん人形と少しのお小遣いを入れて、
これから家出をする!と高らかに宣言をしました。

すると母が、ちょっと待って
と声をかけてくれたので
引き止めてくれるのかと思ったら、
丁度できたところだからこれを持って行きなさい
と、焼き芋を差し出してきました。

引き止めてもらえずに、さらにむくれた私は
二度とこんな家に戻ってくるもんかと
家をあとにしました。

少し歩いて、近くの公園で
ひとり焼き芋をほおばりました。

食べれば食べるほど、寂しくなって、
10分もしないうちに家に舞い戻ったのでした。

もちろん、母は小さな子供の家出宣言など
真に受けてはいなかったのだと思いますが
家出を止めずに、焼き芋を持たせて出かけさせるなんて
なかなか粋なことをするなあと今になって思います。

きっと大好きな焼き芋をほおばれば、
家に帰ってくるとわかっていたのでしょうね。(2009年11月17日更新)

コラム

焼き芋、レモンソース添え

材料:さつまいも 適量
   作りやすい分量のソース:レモン 1個、 バター 30g、 塩 小さじ1、 
               甜菜糖(または砂糖)小さじ1〜大さじ1(好みで加減)
   
1)焼き芋はよく洗って、皮ごとアルミホイルで包み、ストーブなどの上で30〜40分ほど焼く。
  オーブンの場合は200度程度で30〜50分、魚グリルの場合は弱火で30〜50分ほど焼く。
  オーブン、魚グリルの場合は、アルミホイルで包まなくても良い。
2)小鍋に、薄くすりおろしたレモンの皮、バター、塩、甜菜糖、絞ったレモンを入れ、
  極弱火にかける。ゆっくりと溶かし合わせ、とろりとしたら火からおろす。
3)焼き芋ができあがったら、ソースを添えて頂く。

*オーブン、魚グリルの場合、アルミホイルで包むとふかし芋のようになります。
 皮をぱりっとさせたいときは、そのまま焼いて下さい。
*芋の大きさにより、焼き時間は調整してください。
*レモンはできれば、無農薬、ノーワックスのものを。
 なければ、表皮をたわしでこすり、よく洗ってから使用してください。
*レモンの皮をすりおろすときは、薄めを心がけます。
 すりおろすと出てくる白い部分も加えてしまうと苦みが出てしまいます。

バックナンバー

ごあいさつ

第1回 蕪、酒粕、豆乳のスープ

第2回 黒豆、シナモン風味

第3回 鶏だしスープのトック(韓国雑煮)

第4回 干し大根のソテー、ケッパーソース

第5回 冬のジャム、生姜とはちみつ風味

第6回 おかき、三種

第7回 スパイシーチョコレートケーキ

第8回 カリフラワーのサブジ

第9回 春菊ペーストのパスタ

第10回 雪ノ下の天ぷら

第11回 長葱のクリームチーズ和え

第12回 春キャベツとささみの蒸し煮

第13回 新玉葱、ドライトマトのマリネ

第14回 サンドイッチフィリング、三種

第15回 クレソン、生姜のお稲荷さん

第16回 新じゃが、プルーンの煮込み

第17回 うちのトマトパスタとルッコラのサラダ

第18回 筍のピクルス

第19回 牛蒡(ごぼう)と胡桃のキャラメリゼ

第20回 おからたっぷりのスコーン

第21回 人参のサラダ、人参のポタージュ

第22回 生らっきょうのフリット、ローズマリー風...

第23回 味付け卵、八角風味

第24回 アイリッシュソーダブレッド

第25回 イカ、トマト、ミントの炒め

第26回 梅味噌、梅味噌豆

第27回 塩豚、茹で豚

第28回 ガーリックトースト

第29回 ローズマリーポテト

第30回 葉唐辛子、鶏肉のカレー

第31回 夏のキムチ三種

第32回 ラタトゥユ、ガスパチョ

第33回 生姜ジュース

第34回 セミドライトマト

無花果(いちじく)のソテー、サラダ、白味噌和え

第36回 南瓜(かぼちゃ)のグリル、玉葱のソース

第37回 緑のサラダ、赤のサラダ、黒のサラダ

第38回 蕎麦粉のガレット

第39回 柿、ディルのクリームチーズ和え

第40回 蛸(たこ)、青海苔のクリームソースパス...

第41回 ドライフルーツ、ナッツのケーキ

第42回 豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

第43回 焼き芋、レモンバターソース添え

第44回 野菜ルーのカレー

第45回 コジード・ア・ポルトゲーザ(ポルトガル...

第46回 鰯の塩焼きとカルド・ヴェルデ

第47回 ヨーグルトパンケーキ

最終回 牛すじの煮込み


アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。


おたよりを送る