第46回 鰯の塩焼きとカルド・ヴェルデ

コジード・ポルトゲーザを作ったら
またポルトガルに行きたくなりました。

海外は10カ国ぐらい行きましたが
ポルトガルは中でも一番
住んでみたいと思った国です。

飾り気のない人柄と、あたたかな気候。
発展することをやめてしまったような古い街並。
素朴な料理。

きどったところ、肩肘をはったところが何もない。

いつも頑張りすぎるところがある私に
頑張らなくてもこんなに楽しいのだということを
この旅で教えてもらったような気がします。
 

ポルトガルへの旅の名目は
一応、新婚旅行でした。

でも皆さんが想像するような
甘いものでは決してなく
最初のホテル以外何も決まっていない
いきあたりばったりの旅。

しかも、最初のホテルで
日本からの知人と待ち合わせ、
また知人が5人ほどのおじさま、
おばさまを連れてきていたので
いきなり総勢8人の団体旅行に。

なんとも不思議な旅の始まりでしたけれど
そんなプランのない旅のほうが
柔軟で面白いことが起こるものです。

大人数だとなかなか意見がまとまらなかったりと
小さな問題も起こるものですが
ご飯の時間が楽しいことが何よりの収穫でした。

品数を多く頼んでシェアしたり
ワインも飲み比べしたり。
2人きりより、ずっと美味しく
頂くことができました。
 

ポルトガルの料理はシンプルなものばかりでした。
見ただけで、一口食べただけで
レシピがわかってしまうような潔さ。

素材の良さをいかして、
焼くだけ、煮るだけ、揚げるだけ。

だから毎日食べても飽きない。
少々、量は多いのですが、
料理自体は胃にも優しい。

格安で、とびきり美味しいワインとともに
楽しみました。

旅の写真から。
(料理名や読み方が
多少間違っているかもしれません。)

Bacalhau a Bras
バカリャウ・ア・ブラス
干し鱈とポテトの卵とじ

ポルトガル料理には
バカリャウ、干し鱈がかかせません。
きつい塩漬けになっていて、塩抜きしてから使います。
干し鱈のコロッケをはじめ
たくさんの料理を見かけました。

バカリャウ・ア・ブラスは
フライドポテトと鱈を炒めて
卵でゆるくとじたもの。
素朴で、でも満足感のある料理。

日本にも干し鱈、すきみ鱈があります。
ときどき思い出して、作っています。

Sopa a Alentejana
アソルダ・ア・アレンテージャ
アレンテージョ風パン入りスープ

にんにくの効いたパン入りのスープ。
ポルトガルには定番のスープがいくつかあって
それらはどれもしっかりと煮込まれていて、
外すことなく、必ず美味しい。
カフェでも頂けるので、
小腹がすいたときにお世話になりました。

Canja 
カンジャ
鶏のスープ

鶏の水炊きの肉をほぐしたようなもの。
お米やパスタが入っていることが多いようです。

Caldo Verde
カルド・ヴェルデ
じゃがいものスープ

スープと言えばこれがかかせません。
旅で食べ過ぎた胃にも優しい
ほっとする味のスープです。

少し変わったレシピでは

Carne de Porco a Alenteja
カルネ・デ・ポルコ・ア・アレンテージャ
アレンテージョ風豚料理

あさりと豚の煮込み。
お互いの出汁がからみあって、
とても美味しい組み合わせでした。

Migas de Porco
ミーガシュ・デ・ポルコ
パンに肉の汁を吸わせたおじやのようなもの

きっとお肉が貴重だった時代に
考えられたレシピなのだと思います。
ボリュームたっぷりになったパンが
お腹にずっしりとたまります。
 
タコを食べる国は少ないですが
ポルトガル人は大好きなようです。

Salada de Polvo
サラダ・ド・ポルヴォ
タコのサラダ

Arroz de Polvo
アローシュ・ド・ポルヴォ
タコのリゾット

お米もたくさん食べるそう。
これはとてもあっさりとした味でした。
トマトを入れてこってり仕上げる
レシピも多いようです。
 
他にもたくさん頂きました。
料理名はうろ覚えなので割愛させてくださいね。

豆の煮込み

豆と(おそらく)豚肉のスープ
どろどろで、味が濃くて、どっしりとしたスープ

鶏の丸焼き

スズキの塩焼き

鰯の塩焼き

鯖の煮物

鯵のフライ

こう並べると、とても日本食に近いですね。
レシピもシンプルなせいか
外すことがほとんどなく
毎日美味しく頂きました。
  

さて団体御一行様は
リスボンを出て、街ごと世界遺産のエヴォラへ。
街のいたるところに黄色が使われた
こじんまりとした可愛い街。

その後、私の希望で
何もない平原をバスをのりつぎ、ひた走り
モンサラーシュへ。

沈黙の音がするとも言われる
とても静かな村です。

その静かな佇まいが気に入って、
若者二人(私達のこと)は
モンサラーシュに滞在をすることに決め
おじさま、おばさま達はまた別の街へ
と分かれました。

静かなのは、モンサラーシュが
小高い山の上にあるからです。
眼下にはどこまでも続く平野が
360度どこからでも見渡すことができます。

30分も歩けば一周できるとても小さな村。
東から登る太陽も、西に沈む太陽も
同じ場所で見る事ができます。

朝焼けも夕焼けも
つきあってくれた猫です。
 

音のない小さな村で、
ただじっとしていました。

じっと風の音に耳を傾け
止まってしまいそうな時の中で
太陽が少しずつ動いて行くのを見ていました。

じっとしていたら、
心が久しぶりに体の中に
戻ってきた気がしました。

いつも自分の心は
何かにせかされるように、
走ってばかりいました。

音のない静かな場所に来て
本来あるべき場所に
ようやく戻って来た
そんな感覚がありました。

曲もたくさん生まれました。
「Everyday trip」に収録した
「朝焼けと夕焼けの見える丘」や
「ゆびおりかぞえ」などがそうです。

「ゆびおりかぞえ」に登場する「声」は
モンサラーシュの住人達です。
日に数本しかないバスを
丘の上で待っている子供達の歌です。

何十分も前から、見下ろして
登ってくる車やバスを待っていました。
その姿がとても可愛くて忘れられません。
 

ポルトガルの料理は
日本の料理にとても近いと言われています。
住んでみたいと思ったのも
料理の親しみやすさも大きいと思います。

すぐにできる簡単なポルトガル料理なら
鰯の塩焼き、そしてカルド・ヴェルデ
じゃがいものスープをおすすめします。

鰯を塩焼きにするのは日本と一緒です。
そこにオリーブオイルと
レモンをぎゅっと搾るのがポルトガル流。
付け合わせに、茹でじゃがいもや
くたくたに煮た青菜を添えれば完璧です。

カルド・ヴェルデのヴェルデは
緑という意味なのですが
ケールを刻んだものなのだそうです。

ケールは日本では青汁のイメージしかありませんね。
なかなか手に入りませんから
同じアブラナ科のキャベツの
青い葉の部分で代用しました。
  

ヴェルデと言えば、
ヴィーニョ・ヴェルデを忘れてはいけません。

モンサラーシュで元気を取り戻した後、
リスボンに戻り、今度は
ヴィーニョ・ヴェルデを求めて
ポルトへ行きました。

ヴィーニョ・ヴェルデとは
緑のワイン、若いワインと言われ
微発泡性の爽やかな味のワインです。

ポルトの街で、ふらりと入った街の飲み屋で
樽出しで頂きました。
その美味しさと言ったら!

フレッシュさを堪能できる
はつらつとした美味しさは
ワインの概念をくつがえすものでした。

結局は、私も旦那さんも
美味しいものにつられ、
ゆっくりできずに、その後あちこちに
足を伸ばしてしまうのでした。

ゆっくりしても、できなくても
それも旅の楽しい思い出です。

しばらくは家でポルトガル料理を楽しんで
また、必ず訪れたいなと思っています。(2009年12月8日更新)

コラム

鰯の塩焼きポルトガル風、カルド・ヴェルデ(じゃがいものスープ)

【鰯の塩焼き ポルトガル風】
材料:鰯 2〜3匹、 じゃがいも 3〜4個、 ほうれん草などの青菜 1/2束
   塩 適量、 オリーブオイル 適量、 レモン 1/2個

1)鰯は少し多いかなというぐらいの塩を高い位置からふって、10分ほど置き、水気をふきとる。
2)盛りつける側を上にして、鰯をグリルで焼く。良い色に焼きあがったら、裏面も焼く。
3)じゃがいもは蒸すか茹でて皮をむいておく。ほうれん草は塩を入れた熱湯でさっとゆがいて、
  (ポルトガル流にはくたっとなるまでゆがいて)、流水にさらした後引き揚げておく。
4)鰯、じゃがいも、ほうれん草を盛りつけ、オリーブオイルをかけ、レモンを搾って頂く。

*グリルの加減は家庭によって違うので、焼き具合を見て調節してください。

【カルド・ヴェルデ(じゃがいものスープ)】
材料:じゃがいも 3〜4個、 玉葱 1/2個、 キャベツ(青い外側の部分) 1〜2枚、
   にんにく 1かけ、 塩 小さじ1、 胡椒 適量、 オリーブオイル 適量、
   水 500cc程度

1)じゃがいもは一口大に、玉葱はみじんぎり、にんにくはすりおろす。
  鍋にオリーブオイルをひいて、ざっと炒めたあと、水を加えて煮立たせる。
2)じゃがいもが柔らかくなったら、鍋の中で木べらでつぶすか、
  あら熱をとってミキサーにかけてポタージュ状にする。
3)ミキサーを使った場合は鍋に戻し、キャベツを細かく切って加え、さっと煮る。
  塩、胡椒で調味して、器に盛り、オリーブオイルをかけて頂く。

バックナンバー

ごあいさつ

第1回 蕪、酒粕、豆乳のスープ

第2回 黒豆、シナモン風味

第3回 鶏だしスープのトック(韓国雑煮)

第4回 干し大根のソテー、ケッパーソース

第5回 冬のジャム、生姜とはちみつ風味

第6回 おかき、三種

第7回 スパイシーチョコレートケーキ

第8回 カリフラワーのサブジ

第9回 春菊ペーストのパスタ

第10回 雪ノ下の天ぷら

第11回 長葱のクリームチーズ和え

第12回 春キャベツとささみの蒸し煮

第13回 新玉葱、ドライトマトのマリネ

第14回 サンドイッチフィリング、三種

第15回 クレソン、生姜のお稲荷さん

第16回 新じゃが、プルーンの煮込み

第17回 うちのトマトパスタとルッコラのサラダ

第18回 筍のピクルス

第19回 牛蒡(ごぼう)と胡桃のキャラメリゼ

第20回 おからたっぷりのスコーン

第21回 人参のサラダ、人参のポタージュ

第22回 生らっきょうのフリット、ローズマリー風...

第23回 味付け卵、八角風味

第24回 アイリッシュソーダブレッド

第25回 イカ、トマト、ミントの炒め

第26回 梅味噌、梅味噌豆

第27回 塩豚、茹で豚

第28回 ガーリックトースト

第29回 ローズマリーポテト

第30回 葉唐辛子、鶏肉のカレー

第31回 夏のキムチ三種

第32回 ラタトゥユ、ガスパチョ

第33回 生姜ジュース

第34回 セミドライトマト

無花果(いちじく)のソテー、サラダ、白味噌和え

第36回 南瓜(かぼちゃ)のグリル、玉葱のソース

第37回 緑のサラダ、赤のサラダ、黒のサラダ

第38回 蕎麦粉のガレット

第39回 柿、ディルのクリームチーズ和え

第40回 蛸(たこ)、青海苔のクリームソースパス...

第41回 ドライフルーツ、ナッツのケーキ

第42回 豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

第43回 焼き芋、レモンバターソース添え

第44回 野菜ルーのカレー

第45回 コジード・ア・ポルトゲーザ(ポルトガル...

第46回 鰯の塩焼きとカルド・ヴェルデ

第47回 ヨーグルトパンケーキ

最終回 牛すじの煮込み


アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。


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