第10回 雪ノ下の天ぷら

とても忙しくなってきました。

前回にも書きましたが
春一番が吹いた後は忙しいのです。

庭のあちこちから
いろんな緑が顔を出して
日々、表情が変わります。

これから花となるもの
香り立つハーブになるもの
美味しい野菜になるもの
そして冬の間は枯れ枝として過ごした木々も
枝のくぼみに小さな芽を出しています。
 

その中で一番早く動き出すのは
野草。いわゆる雑草です。

雑草といっても、つい少し前の時代
たとえばおばあちゃんの世代なら
食べていただろうというものが多い気がします。

こんなに身近に生えているのに
いつから皆、食べなくなってしまったのでしょう。
もったいないと思うのは
食い意地がはっている私だけなんでしょうか。

居ても立ってもいられず
今日も起き抜けに
庭にしゃがみこんで野草のチェックです。
 

蕗、蕗の薹(ふきのとう)
茎はもう少し成長したら、煮物に。
蕗の薹は天ぷら、蕗味噌などに。

烏野豌豆(からすのえんどう)
天ぷらや炒め物に。
ピンク色の花が咲いた後
さやができますが、これも食べられます。
クセがなく食べやすい味。

芹(せり)
生のままでも、軽くゆがいたり、
炒めても。

野芥子(のげし)
天ぷらや炒め物に。
少し苦みがあります。

雪ノ下
天ぷらが最高。

可愛らしい小さな葉は
滑りひゆ(すべりひゆ)。
ゆがくとぬめりが出て美味。
夏になると小さな黄色い花をつけます。
これがまた可愛いのですよ。

小さな我が家の庭でも
これだけの種類が出て来ます。

初夏になればドクダミも
わんさか出て来ます。
 

庭であれこれ摘んでいる私を見て
また草を食べさせられるのか
と旦那さんが心配そうにしています。

でも、考えてみて!
庭でタダで採取して
体に良いなら最高だと思うの。
アクも辛みも苦みも
この時期だけのお楽しみなのです。
 

そんな半信半疑の旦那さんも
美味いっと喜んでくれたのが
雪ノ下の天ぷらです。

見た目は、食べられそうにない縞模様ですが
揚げると、少し肉厚な葉がほくほくとして、
和みのあるやわらかな味わいなのです。

雪ノ下は5月頃に
小さな白い花が咲きます。
これもまた可憐で素敵なのです。

食べられて、可愛い花でも
楽しませてもらって
だから庭いじりはやめられません。

独活(うど)やたらの芽と合わせれば
立派な春の一皿に。
 

野草で思い出すのは
広島に住んでいたおばあちゃんです。

中学生の頃のこと。
おばあちゃんが横浜に泊まりに来た時
山を切り崩した新興住宅地にある
実家近くの空き地に
大量のよもぎを発見しました。

おばあちゃんは居ても立ってもいられず
日が暮れるまで、よもぎ摘みをしていました。

リエも手伝え、と言われたのですが
造成中の急斜面をよじ登って(!)
張り切るおばあちゃんを見て
そのときは、なんだか恥ずかしいな
と思ってしまったのです。

用事があると嘘を言って
私は手伝わなかった。

でも、次の日作ってくれたよもぎ餅は
本当に、本当に美味しかった。

手伝わなかったことを後悔しました。
 

けれど今、こうして野草を見て
同じように、居ても立ってもいられない気持ちになって
摘んで食している私。

こんな私を見れば、あのときのことを
許してくれる気がします。

今なら迷いなく
急斜面もよじ登りますから。
血は争えないものですね。(2009年3月3日更新)


 
参考文献:川原勝征著『野草を食べる』南方新社、2005年

コラム

雪ノ下の天ぷら


材料:雪ノ下 適量、小麦粉 1カップ、卵 1個、氷水 適量、塩 適量、

1)雪ノ下の葉を根元から茎ごと摘み、洗って、水気をしっかりと拭き取っておく。
2)冷やしておいた卵に氷水を合わせて1カップとし、
  ふるっておいた小麦粉を2〜3回に分けて菜箸で混ぜて、衣を作る。
  このとき、ダマが残ってもよいので、さっと混ぜるだけにする。
3)高温(180度程度、衣を鍋に落とすと、すぐに散る)に熱した油(分量外)で、
  葉の裏側だけに衣をつけ、裏側から揚げる。
  表側は一瞬だけ揚げて取り出し、揚げたてをすぐに頂く。

*衣は揚げる直前に作り、さくさくとした仕上がりになるよう、混ぜすぎないようにします。
 粘りが出ると、もったりとした仕上がりになってしまいます。
*なんといっても天ぷらは揚げたてが一番です。ご飯のすべての準備を完了してから、
 最後に天ぷらを揚げて、揚げたそばから頂いて欲しいです。
*たっぷりの新しい油で揚げれば、からりと仕上がります。油はたっぷり使って、
 その後、炒め物に使ったり、カスの出やすい揚げ物などに利用してください。
*油は、もたれないという点でオリーブオイルやグレープシードオイルがおすすめです。
 美味しさの点ではごま油です。

※編集部より:システムの不具合により、3/3の16時〜3/4の12時30分頃まで今回の内容が表示されておりませんでした。(現在は表示されております) 読者の皆様に深くお詫び申し上げます。

バックナンバー

ごあいさつ

第1回 蕪、酒粕、豆乳のスープ

第2回 黒豆、シナモン風味

第3回 鶏だしスープのトック(韓国雑煮)

第4回 干し大根のソテー、ケッパーソース

第5回 冬のジャム、生姜とはちみつ風味

第6回 おかき、三種

第7回 スパイシーチョコレートケーキ

第8回 カリフラワーのサブジ

第9回 春菊ペーストのパスタ

第10回 雪ノ下の天ぷら

第11回 長葱のクリームチーズ和え

第12回 春キャベツとささみの蒸し煮

第13回 新玉葱、ドライトマトのマリネ

第14回 サンドイッチフィリング、三種

第15回 クレソン、生姜のお稲荷さん

第16回 新じゃが、プルーンの煮込み

第17回 うちのトマトパスタとルッコラのサラダ

第18回 筍のピクルス

第19回 牛蒡(ごぼう)と胡桃のキャラメリゼ

第20回 おからたっぷりのスコーン

第21回 人参のサラダ、人参のポタージュ

第22回 生らっきょうのフリット、ローズマリー風...

第23回 味付け卵、八角風味

第24回 アイリッシュソーダブレッド

第25回 イカ、トマト、ミントの炒め

第26回 梅味噌、梅味噌豆

第27回 塩豚、茹で豚

第28回 ガーリックトースト

第29回 ローズマリーポテト

第30回 葉唐辛子、鶏肉のカレー

第31回 夏のキムチ三種

第32回 ラタトゥユ、ガスパチョ

第33回 生姜ジュース

第34回 セミドライトマト

無花果(いちじく)のソテー、サラダ、白味噌和え

第36回 南瓜(かぼちゃ)のグリル、玉葱のソース

第37回 緑のサラダ、赤のサラダ、黒のサラダ

第38回 蕎麦粉のガレット

第39回 柿、ディルのクリームチーズ和え

第40回 蛸(たこ)、青海苔のクリームソースパス...

第41回 ドライフルーツ、ナッツのケーキ

第42回 豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

第43回 焼き芋、レモンバターソース添え

第44回 野菜ルーのカレー

第45回 コジード・ア・ポルトゲーザ(ポルトガル...

第46回 鰯の塩焼きとカルド・ヴェルデ

第47回 ヨーグルトパンケーキ

最終回 牛すじの煮込み


アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。


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