第21回 人参のサラダ、人参のポタージュ

雨上がりは、庭の緑の勢いが違います。
隅々まで水を蓄えて、見せつけるように
葉が大きく広がっています。

たった1日の雨で
ぐんと大きくなったのがわかります。

育てている野菜やハーブはもちろん
雑草と言われる緑も同じです。

雑草といっても、我が家の庭の住人でもあり
それぞれとても個性的で魅力的だし、
何より皆、大きくなろうと頑張っているので
ついつい愛着がわいてしまいます。

とはいえ、伸び放題にしてしまうと
庭はあっと言う間に荒れ果ててしまうので、
育てたいものの場所にかぶる雑草は抜いて、
蒸れないよう、すき間を作るようにしています。
 

いつものように、伸びすぎた雑草の手入れをしていたら、
人参の葉っぱにとても似ている緑がありました。
これはいったい何という草なのだろうと引っ張ってみると
とても小さかったけれど、確かにそれは人参でした。

でも人参を植えた覚えがないのです。
今年初めて、種蒔きをして育ててはいるのですが、
種を蒔いた場所は、全く違う場所で、
まだ実ができる時期でもありません。

いったいいつの間に、どうやって
庭の片隅で人参が育ったのでしょう。

いろんな形での堆肥作りにチャレンジしていたので
きちんと発酵できなかった野菜クズから
生まれたのかもしれませんが、
でもやっぱり場所の合点がいきません。

不思議に思いながらもかじってみると、
ちゃんと人参の味がしました。
知らない間にしっかり育っていて、
じんわりと嬉しい気持ちになりました。

これが、今年4月に種を蒔いた人参、
リトルフィンガーです。
プランターや鉢でも育てられる小さなタイプです。
収穫はまだまだ先なので、楽しみに育てています。
 

人参のもつ甘みと、元気な気持ちになる色がとても好きです。
我が家のストックに、切らすことはほとんどありません。

人参の一番の魅力は、その鮮やかな色にあると思います。
切ったり、煮たりすると変色してしまう野菜が多い中で、
どんな風に扱っても、食欲をそそる色のままでいてくれます。

私が中学生だった頃、母が毎日お弁当を作ってくれました。
練習の厳しい部活動に入っていたので、休みなく朝練がありました。
毎日のお弁当は朝が早いだけでも大変だったと思うのですが、
どんなに朝が早く、どんなに時間がないときでも、
仕上がりの色合いにこだわる人でした。

全てをつめ終わったあと、お弁当を眺め、
「あ、緑が足りないわ!緑が!」
「なんだかぱっとしないわ」などと言いながら
時間がない中、慌てながらも決してあきらめず、
さっと何かを用意して、色合いの完成にこぎつけていました。

絹さや、いんげん、法蓮草といった緑、
そして人参やプチトマトといったぱっとするものは
母のお弁当には欠かせないアイテムでした。

それらの野菜を見るたびに、
すべりこみセーフでお弁当に追加される様子や
お昼になって開いたお弁当の食欲をそそる表情を
昨日のことのように思い出します。

そしてかくいう私も、
料理の仕上げにはお皿を眺め、そして食卓に並べて眺め、
色合いの最終確認をするようになりました。
母のように、どんなに急いでいても、です。

さて、人参の一番好きな食べ方は
すりおろす、です。

不思議なほどに、甘みがぐっと増します。
この人参の甘みを知ってしまうと、
すりおろさずにはいられません。

貿易商の父がヨーロッパのどこかの国で買って来た
チーズのスライサーが重宝しています。
食べやすい適度な大きさになります。

人参を斜めにあてて、さっさっとおろしていくと
さほど時間もかかりません。

すりおろした人参は酢で和えれば、
さらに甘みが引き立ち、また、数日たった頃
美味しさに深みも出て来ます。

丁度、先日京都でライブがあり
千鳥酢の合せ酢を買って来たところでした。
優しくまろやかなのに、すっきりとしていて
人参臭さなんてどこへやら、とても美味しく仕上がります。

常備菜として作り置きしておけば、
毎日の食卓がきっと素敵な色合いに
私の母で言う、ぱっとした感じになるはずです。
 

スープにするときもおろします。
やはり甘みを楽しむためです。

以前、人参ジュースを作ったときに
ジューサーやミキサーで絞るよりも、
手ですりおろした方が格段に甘く、
旨味が前に出て、とても美味しく感じたのです。

なので、最後にミキサーで攪拌するときにも
下準備としてすりおろす。無駄かもしれませんが、
美味しく頂くためのおまじないのようなものです。

人参はその色に、
明るい気分にしてくれる力があると思います。
ぜひ毎日のご飯の常連にしてくださいね。(2009年5月26日更新)

コラム

人参のサラダ、人参のポタージュ


【人参のサラダ】
材料:人参 2本、寿司酢などの甘みのある合わせ酢 大さじ2(または 酢 大さじ2、
   みりん 大さじ 1)、塩 小さじ1、すり胡麻(白) 大さじ1

1)人参はスライサーなどですりおろし、塩をまぶして揉み込んでしんなりとさせる。
2)水気を切り、合わせ酢、すり胡麻を加え、さっと和えて頂く。

*数日たつと味がなじみ美味しいです。
*冷蔵庫で1週間ほど保存できます。

【人参のポタージュ】
材料:人参 1本、玉葱 1/2個、セロリ 1/2本、ベーコン 2枚、
   水 1カップ、 豆乳 1カップ、塩 適量、胡椒 適量

1)人参、玉葱、セロリをそれぞれすりおろす。
2)熱したフライパンで小さく切ったベーコンを炒め、色づいたら、野菜を加えて炒める。
3)水を加え、煮立ったら火をとめ、あら熱をとり、ミキサーでなめらかになるまで攪拌する。
4)鍋に戻し、豆乳を加え、弱火で温めなおし、塩、胡椒で味をととのえて、頂く。

*冷やしても美味しく頂けます。

バックナンバー

ごあいさつ

第1回 蕪、酒粕、豆乳のスープ

第2回 黒豆、シナモン風味

第3回 鶏だしスープのトック(韓国雑煮)

第4回 干し大根のソテー、ケッパーソース

第5回 冬のジャム、生姜とはちみつ風味

第6回 おかき、三種

第7回 スパイシーチョコレートケーキ

第8回 カリフラワーのサブジ

第9回 春菊ペーストのパスタ

第10回 雪ノ下の天ぷら

第11回 長葱のクリームチーズ和え

第12回 春キャベツとささみの蒸し煮

第13回 新玉葱、ドライトマトのマリネ

第14回 サンドイッチフィリング、三種

第15回 クレソン、生姜のお稲荷さん

第16回 新じゃが、プルーンの煮込み

第17回 うちのトマトパスタとルッコラのサラダ

第18回 筍のピクルス

第19回 牛蒡(ごぼう)と胡桃のキャラメリゼ

第20回 おからたっぷりのスコーン

第21回 人参のサラダ、人参のポタージュ

第22回 生らっきょうのフリット、ローズマリー風...

第23回 味付け卵、八角風味

第24回 アイリッシュソーダブレッド

第25回 イカ、トマト、ミントの炒め

第26回 梅味噌、梅味噌豆

第27回 塩豚、茹で豚

第28回 ガーリックトースト

第29回 ローズマリーポテト

第30回 葉唐辛子、鶏肉のカレー

第31回 夏のキムチ三種

第32回 ラタトゥユ、ガスパチョ

第33回 生姜ジュース

第34回 セミドライトマト

無花果(いちじく)のソテー、サラダ、白味噌和え

第36回 南瓜(かぼちゃ)のグリル、玉葱のソース

第37回 緑のサラダ、赤のサラダ、黒のサラダ

第38回 蕎麦粉のガレット

第39回 柿、ディルのクリームチーズ和え

第40回 蛸(たこ)、青海苔のクリームソースパス...

第41回 ドライフルーツ、ナッツのケーキ

第42回 豚のスペアリブ、棗(なつめ)の煮込み

第43回 焼き芋、レモンバターソース添え

第44回 野菜ルーのカレー

第45回 コジード・ア・ポルトゲーザ(ポルトガル...

第46回 鰯の塩焼きとカルド・ヴェルデ

第47回 ヨーグルトパンケーキ

最終回 牛すじの煮込み


アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。


おたよりを送る