第22回 生らっきょうのフリット、ローズマリー風味
梅雨のような長雨が続きました。
庭の緑が茎を伸ばして上を目指していたのに、
雨に打たれて、すっかりしなだれこんでしまいました。
雨がやんだ朝に、茎が折れてしまったり、
倒れ込んだり、茂りすぎた緑を刈り取りました。
左側にある、白と赤の小さな花がついているのが
チェリーセージ・ホットリップス。
オレンジ色の花がパンジー、濃いピンク色の花がビオラ。
これらは部屋に飾るとします。
茎がひょろひょろと伸びて、丸い葉をつけているのが
ナスタチウム。キンレンカとも呼びますね。
これは葉っぱも花も食べられます。
サラダやサンドイッチの具にもいいです。
一番右側にあるのがチコリーです。
今年初めて育ててみたのですが、
緑の葉っぱは苦みが結構ありますね。
もう少し株が大きくなったら、お店で売っているような
軟白栽培にトライしてみるつもりです。
丁度この時期、梅雨が近づいてくると、
いろいろ仕込みが忙しくなります。
文字通り、梅の季節がやって来ます。
その梅の前にらっきょうです。
大袋に入れて売られているのを
そろそろ見かける時期ですね。
去年は、甘酢漬け、はちみつ漬け、昆布醤油漬けにしました。
自分好みの味にできるのが、自家製の楽しいところです。
他にも、昆布醤油、にんにく醤油、唐辛子醤油、
梅味噌、梅酢、梅酒、棗(なつめ)酒、枇杷(びわ)酒など、
自分で漬けこんだものがいろいろあります。
どれも好みの材料をビンに入れて漬け込むだけです。
準備は始めてしまえば簡単なもので、
後はゆっくりと時間の流れに任せるだけです。
先日、冷蔵庫の奥にすっかり忘れていた
昆布醤油を見つけました。
お魚の煮付けに使おうと鍋にあけたところ、
らっきょうがごろごろと一緒に出て来ました。
1年近く放置していて、
らっきょうが深い醤油色に染まっていたので、
ぱっと見たところではわからず、
すっかり昆布醤油と勘違いしてしまいました。
鍋に勢いよく入ってしまったので、
そのまま一緒に煮込むことにしました。
甘めに煮たカレイに、濃厚な昆布、
そしていつもは入ることのないらっきょうの苦み。
不思議な取り合わせでなかなか面白い味でした。
ところで我が家には、1年どころではない
長年漬けっぱなしのらっきょうがあります。
おそらく甘酢漬けだったはずのものですが、
色は深い茶色になり、食べてみれば
歯ごたえはすっかりなくなった、ずぶずぶのらっきょうです。
もはやらっきょうとは言えない別の食感です。
広島のおばあちゃんが漬けたものです。
おそらく10年はゆうに経っていると思います。
もしかしたら20年ということもあるかもしれません。
私の父と母は、広島の同じ町の出身なのですが、
母方のおばあちゃんは一人で広島で暮らしており、
父方のおばあちゃんは、今は東京の病院にいます。
その東京の病院にいるおばあちゃんが漬けたものです。
料理が大好きだったおばあちゃんは、
たくさんの自家製の漬け物を作っていました。
薄暗い納屋には、今も所狭しとビンが並んでいます。
おじいちゃんはもう亡くなってしまったので、
その家には誰も住んでいませんが、
家財道具などは、おばあちゃんが
病院に入ったときと同じままにしてあります。
時々立ち寄って、窓を開け、風を通しに行きます。
そのとき、納屋にあるたくさんあるビンの中から、
こっそりひとつずつ頂いて帰ります。
もう何年も、きっと何十年も置きっぱなしのらっきょう。
歯ごたえは、もうらっきょうではないけれど、
腐らず、しっかりと美味しい風味を保ち続け、
まるでずっとおばあちゃんを待っているかのようです。
おばあちゃんが手塩にかけた味は、
時間をたっぷりとかけて、ビンの中で熟成し、
甘酸っぱい角はすっかりと取れて、
こっくりとした濃厚さと、豊かな広がりのある味です。
おばあちゃんがもしまた、話せるようになったら
レシピを聞きたいなと思いながら、日々が過ぎています。
こうして書いている間も、
買って来たらっきょうが匂いを放っています。
すぐに芽がのびてしまうので、
早めにとりかからなければなりません。
土にまみれた薄皮をむくと、
真っ白で、つやつやのらっきょうが顔を出します。
つんとした食欲をそそる匂いに、
漬け込むだけではもったいなくなり、
生のままを少し頂くことにしました。
揚げると、ほくほくとして
口に残る独特の臭みも消えてしまいます。
庭で大きく枝を伸ばしているローズマリーを
アクセントに、レモンを搾って頂くと、
爽やかな風味のフリットになりました。
衣にビールを使っています。
残りは飲みながら、らっきょうを揚げました。
今頃の晴れた日には、そんなことも楽しいですね。
さて今年は、去年美味しかった昆布醤油漬け、
簡単にできる味噌漬け、塩漬けにしようと思います。
たくさん漬けるときは、1年で食べきってしまわず
長く保存してみるのもいいかもしれません。
おばあちゃんのらっきょう漬けのように
特別な味になりそうな気がします。(2009年6月2日更新)
生らっきょうのフリット、ローズマリー風味
材料:生らっきょう 10個程度、小麦粉 1/2カップ、 卵 1個、 ビール 1/3、
パルメザンチーズ(粉) 大さじ1、ローズマリー 1枝、
塩 適量、 胡椒 適量、 レモン 1/4
1)らっきょうは薄皮をむき、ひげ根と茎の先端を切り落とし、塩、胡椒をしてしばらく置く。
2)ボウルに、ふるった小麦粉、パルメザンチーズ、溶いた卵、ビールをまぜ合わせ、
ローズマリーの枝からしごいて取った葉を加える。
3)中温(170度程度、湿らせてから拭いた菜箸を油に入れたとき、シュワシュワと音を立てて
泡立つ)に熱した油に、衣をくぐらせたらっきょうを入れ、揚げる。
4)色づいたら引きあげ、熱いうちにレモンを絞って頂く。
*衣のビールは炭酸水などで代用できます。カラリと揚がります。なければ普通の水でも構いません。
*油は、仕上がりが油っこくならないオリーブオイルやグレープシードオイルがおすすめです。
























































アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。
