第23回 味付け卵、八角風味
横浜で生まれ、育ちました。
住んでいない方から見ると、
東京も横浜も同じに感じるかもしれません。
けれど随分と違うのです。
それぞれ街の性格があります。
渋谷と横浜を結ぶ東横線沿線に住んでいますが、
渋谷へ行くときと、横浜へ行くときの
洋服選びが自然に変わります。
横浜のほうが、のんびりしていて、
洋服のセンスで言うなら、ちょっとださいところもあり、
そして少し保守的なところがあります。
なので、横浜へはいつもの服が丁度良いのです。
頑張らない程度の普段着がぴったりです。
何かを求めて、新しいことをしたい方には
東京のほうが断然良いというわけですが、
とんがったところがない分、
横浜はゆっくり暮らすには良い所です。

先日、6月1日は横浜開港記念日でした。
市の祝日なので、市内の学校は全てお休みになります。
お休みが嬉しかったからか、今でもしっかりと覚えています。
港では、毎年イベントが開かれ、
開港150周年の今年は、さらに盛大だったようで、
我が家にも花火を連発する音が聴こえてきました。
我が家は決して、海が近いわけではなく、
港まで、電車でも10分ほどかかるのですが、
花火の音も、そして汽笛も聴こえてきます。
汽笛といえば、大晦日を思い出します。
毎年、大晦日が明けて、新年を迎えるときには、
横浜港に停泊中の船が、一斉に汽笛を鳴らすのです。
分厚く重なり合った、ぼおーっという汽笛の音が届くと、
1年の終わり、新しい年の始まりの合図です。
その音とともに、終わっていく1年を振り返り、
ちゃんと頑張れただろうかと思い出を巡らせ、
また、これから始まる1年を思って、
頑張っていかなくてはと、静かに思います。
毎年繰り返しているせいか、汽笛の音を聴くと、
自然にあのニュートラルな気持ちになります。
横浜に住んでいる人には、きっと同じように思っている人が
たくさんいるのではないかと思います。

横浜と言えば、港の他にもうひとつ、
きっと多くの方が思い出すのは、中華街でしょうか。
小さな頃から、家族で大事なイベントがあると
中華街で食事をする、というのが実家の決まりでした。
家族の誕生日、父の会社の創立記念日、
親戚の集まり、還暦のお祝いから
私の結婚の際の両親の顔合わせまで、
考えてみると、すべて中華街の同じお店でした。
もちろん中華街にはたくさんのお店がありますが、
勝手知ったるというのがいいのかもしれません。
時々冒険しながらも、結局はいつもの好きなメニューに落ち着き、
いつもの味を食べて、納得する。
自分が満足するとわかっている場所があるというのは、
home townならではの心強さですね。

中華街での食事の後は、
たいていぶらぶらと散歩をしながら、
目についた中華食材を買い求めます。
中でも好きなものは、
豆豉(とうち)、花椒(ほあじゃお)、
金針菜(きんしんさい)、そして八角です。
他にも、干しえび、きくらげ、クコの実、ビーフンや
豆板醤、甜麺醤、芝麻醤などの定番のものから、
腐乳(ふうるう)、乾燥湯葉、南杏(なんきょう)、北杏(ほっきょう)、
沙茶醤(さーちゃーじゃん)、桂花醤(けいふぁじゃん)など
中華街でないとなかなか見つけられない食材もあり、
何度歩いても飽きることがありません。
里芋の豆豉ソース
豆豉は炒め物に。
納豆のように、豆が発酵しているのですが
醤油のようなコクと、味噌のような風味が混在しています。
独特の塩気で味がひきしまりますが、
豆のふくよかさもあって懐の深い味になります。
そのままでも、細かく刻んでも、
野菜、肉、何にでも合います。
蒸し物のソースにも良いです。
カリフラワーの花椒炒め
花椒は麻婆豆腐に使われる
あの痺れるような辛さのもとです。
日本の山椒よりもずっと香りが強く、
目の覚めるような爽快感があります。
スパイシーさを効かせたい時に、
つぶしたり、挽いて使います。
少量でも十分に痺れます。
元気のないときには食べられません。
炒飯などに隠し味で入れても面白いです。
金針菜(きんしんさい)、わけぎの含め煮
金針菜は花のつぼみです。
水で戻して、出汁を含ませて煮ることが多いです。
きんぴらのように甘辛く油炒めにしても美味しいです。
乾燥させたものなので、ちょっと味気ない風貌ですが、
鉄分が豊富なので、戻し汁も使います。
八角は、他の甘みとは似て非なる甘さ、
加えてほろ苦さもある、独特の存在感があります。
ひとつ入れるだけで、味が際立ち、
何段階もレベルアップしたように感じます。
肉の煮込みの風味づけや、
お菓子の香りづけによく使うようですが、
大好きな味付け卵を作るときに、
八角を数個、放り込んでみたら
いつもの味付け卵がぐっと香り豊かになりました。
八角はその星のような形も可愛いですね。
ミルクティーやチャイに浮かべると、
スパイシーな甘さとともに、眺めても楽しめます。

中華街は、休日ともなると、
びっくりするくらいの人出で賑わう観光地ですが、
平日の顔は、横浜の一つの街といった風情です。
安いランチもたくさんありますし、
中華料理以外にも、美味しい焼き肉屋さんや
老舗のバー、レトロな喫茶店もあります。
少し人通りの落ち着いた中華街を歩くと、
たくさんの顔が浮かびます。
中華街でのご飯はやはり、一人ではなくて、
誰かと一緒に楽しく食べたいものです。
思えば、今までいろんな人と来ました。
私を支えてくれたたくさんの笑顔とともに、
思い出があちこちに詰まっている街です。(2009年6月9日更新)
味付け卵、八角風味
材料:卵 5個、 醤油 1カップ、 みりん 1/2カップ、 昆布 1片、
にんにく 1かけ、 生姜 1かけ、 唐辛子 2〜3本、 八角 2〜3個
1)卵は好みの固さに茹でる。
(半熟卵の場合は、沸騰した湯に卵を入れ、5分程度で引き揚げる。)
冷水にさらしながら、卵の殻をむいておく。
2)醤油、みりん、昆布、にんにく、生姜、八角を鍋に入れ、一度煮立たせる。
3)あら熱を取った調味液に、卵を1時間程度漬け込んでから、頂く。
*1日〜2日程度漬け込むと、黄身まで味がゆきわたり美味しいです。
漬けすぎるとしょっぱくなるので注意してください。
*ジップロックなどのビニール袋で漬け込むと、色むらなく、きれいに仕上がります。
























































アコーディオン・トイピアノ・鍵盤ハーモニカ・オルガンなど、ノスタルジックな味わいをもつ楽器を得意とする鍵盤奏者、音楽家。空気公団・ハンバートハンバート・Akeboshiなど、多くのアーティストのライブ・レコーディング・CM・TVの音楽などに、さまざまな楽器でかかわるほか、ソロプロジェクトであるtrico!やギタリスト・オオニシユウスケとのユニットsmall colorでもアルバムをリリースしている。最近は、スイス絵本の名作『こねこのぴっち』のDVD化にあたり、音楽を担当(2009年1月発売予定)。またインテリア誌「かわいい音楽すてきな暮らし」でレシピ・料理・スタイリングを担当。日々の暮らしを大切にしながら、さまざまな活動を楽しんでいる。

音楽家・良原リエさんによる、暮らしのエピソードとそれにまつわる日々のご飯のレシピ。本人撮影による四季折々の写真とともに、<ありふれた材料でできる簡単な料理をよりよくするためのコツ>を提案していきます。好きなモノ・コトに囲まれた、実のある暮らしを大切にしているリエさんならではの切り口が、「普段の生活」の大事さをあらためて教えてくれるはず。
